「レバノンでは、銃を持っている者は皆、検問所を持っている。そして、銃を持たずにいるなんて正気の沙汰じゃない――だが、断言しておく。正気でない奴らも、ちゃんと銃を持っている」

- 1947年11月14日~2022年2月15日(74歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 政治風刺作家、ジャーナリスト、ユーモリスト
英文
“Everybody with a gun has a checkpoint in Lebanon. And in Lebanon, you’d be crazy not to have a gun. Though, I assure you, all the crazy people have guns, too.”
日本語訳
「レバノンでは、銃を持っている者は皆、検問所を持っている。そして、銃を持たずにいるなんて正気の沙汰じゃない――だが、断言しておく。正気でない奴らも、ちゃんと銃を持っている」
解説
この名言は、内戦や武装混乱の続く地域における暴力の常態化と、そのパラドックスを風刺的に描写したものである。P・J・オロークは、レバノンのように権力や統治の正当性が崩壊した地域では、「銃=力」そのものであり、銃の所有が支配や検問の手段と化しているという現実を、乾いたユーモアで表現している。
「you’d be crazy not to have a gun(銃を持たない方が正気ではない)」という逆説的な言い回しは、自衛のための武装が日常化している異常な状況を映し出している。だがそれに続く「all the crazy people have guns, too(狂ってる連中もみな銃を持っている)」という一文で、武装による安心が決して安全を保証しないどころか、むしろ危険の連鎖を生んでいるという構造的矛盾を鋭く指摘している。
この名言の本質は、武装社会がもたらす不安定な平衡状態と、暴力が支配する空間の狂気にある。オロークは、それをユーモアにくるんだブラックな現実描写として提示し、国家の不在、民間の武装化、暴力のインフレといった深刻なテーマを、軽妙な語り口で読者に突きつけている。
正気であるために銃を持ち、結果として正気を失った世界――そんな現代の地政学的アイロニーを凝縮した、恐ろしくも笑える名言である。
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