「ビル・クリントンは偽善者ではない。富の再分配が正義であり道徳的だと信じているなら、自分自身にその富の一部を再分配しようとするのは、何ら偽善ではない」

P・J・オローク(画像はイメージです)
P・J・オローク(画像はイメージです)
  • 1947年11月14日~2022年2月15日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 政治風刺作家、ジャーナリスト、ユーモリスト

英文

“Bill Clinton is not a hypocrite. If a man believes that it is just and moral to redistribute wealth, there is nothing hypocritical in his attempts to redistribute some of that wealth to himself.”

日本語訳

「ビル・クリントンは偽善者ではない。富の再分配が正義であり道徳的だと信じているなら、自分自身にその富の一部を再分配しようとするのは、何ら偽善ではない」

解説

この名言は、リベラルな再分配政策と政治家の私益追求の矛盾を、P・J・オロークらしい皮肉と逆説で浮き彫りにしている。ここでの「not a hypocrite(偽善者ではない)」という断定は、道徳的整合性をあえてゆがめることで笑いと批判を生み出す技巧的な構文である。

ビル・クリントンは民主党の代表的政治家として、中間層や貧困層への再分配政策を掲げてきた人物である。しかし、彼の私生活や金銭的な成功、講演活動による高額報酬などは、「再分配を説く者が実際には自分を豊かにしている」という印象を与えやすい。この名言は、その矛盾を正面からではなく、「もし彼が本気で再分配を信じているのなら、それを自分にも適用しているだけだ」とすることで、逆説的に批判している

この皮肉の鋭さは、理想と行動が一致しない政治家の常套的なふるまいを、正当化するフリをしてむしろ暴くという点にある。つまり、「言っていること」と「やっていること」が食い違っていても、「信念通りにやっている」と解釈してしまえば矛盾が消える、という詭弁の構造を、あえて露悪的に肯定しているのである。

この名言は、政治的信条と個人的利得のあいだの曖昧な線引きに対する鋭い風刺であり、「偽善」とは何かを考えさせる知的な挑発でもある。政治の世界における道徳的な二枚舌への痛烈な批評が、巧妙な論理逆転によって巧みに表現された一言である。

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