「抽象的な怒りは、レトリックとして続けるにはうってつけだ。郵便局について延々と文句を言うことはできるが、それが郵便配達員に怒っているという意味ではない」

P・J・オローク(画像はイメージです)
P・J・オローク(画像はイメージです)
  • 1947年11月14日~2022年2月15日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 政治風刺作家、ジャーナリスト、ユーモリスト

英文

”Abstract anger is great for rhetorical carrying on. You can go on endlessly about the post office, but it doesn’t mean you’re mad at your mailman.”

日本語訳

「抽象的な怒りは、レトリックとして続けるにはうってつけだ。郵便局について延々と文句を言うことはできるが、それが郵便配達員に怒っているという意味ではない」

解説

この名言は、P・J・オロークによる政治的・制度的な批判と個人攻撃の区別を示す巧妙な風刺である。彼は、制度や組織に対する「抽象的な怒り」が、感情のはけ口としていかに便利で、しばしばレトリカル(修辞的)に利用されているかを指摘している。

「郵便局に文句を言っても、それは郵便配達員に怒っているわけではない」という喩えは、構造やシステム全体に対する不満と、そこに属する個々の人間への攻撃を混同してはならないという警告である。これは、現代においてもしばしば見られる――たとえば政府批判が公務員個人への非難にすり替わったり、企業批判が末端の従業員に向けられたりするような――批判の矛先の誤認に対する皮肉とも読める。

オロークはこの言葉で、怒りを表明することの正当性と、それをどう使うかの責任を問いかけている。抽象的な怒りは、分析や議論を促進する力もあるが、個人に向けることで害となる。つまり、「誰に向けて何を語っているか」を自覚せよという、レトリックと倫理の境界線を見極めるためのユーモラスかつ鋭い示唆が込められている。

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