「鏡に対うときのみ、わが頭の白きを喞つものは幸の部に属する人である」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「鏡に対うときのみ、わが頭の白きを喞つものは幸の部に属する人である」
解説
この言葉は、自分の老いを気にするのが鏡を見たときだけである人は、幸福な人であるという意味である。「喞つ(かこつ)」は、嘆く・愚痴をこぼすという古語であり、ここでは白髪を見て老化を嘆くことを指す。つまり、日常生活の中で老いや苦労を感じるのではなく、鏡に映る外見上の変化だけが気になる程度で済む人は、実際には大きな不幸や重い悩みに直面していないということになる。
背景として、夏目漱石はしばしば心の負担と身体の変化の関係を語っており、この言葉もその延長にある。人生の中で本当に苦しい状況に置かれた人は、鏡を見る暇や自分の容姿を気にする余裕すらなく、日々の生存や精神的重圧に追われる。その対比として、外見上の老いだけを嘆く生活は、むしろ穏やかで恵まれた証とされている。
現代的に解釈すれば、これは小さな悩みで済むこと自体が幸せの証だという教えでもある。外見の変化に目が向くのは、生活や精神が比較的安定しているからであり、その「嘆き」は実は幸福の裏返しである。
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