「都会は太平の民を乞食と間違えて、掏摸の親分たる探偵に高い月俸を払う所である」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「都会は太平の民を乞食と間違えて、掏摸の親分たる探偵に高い月俸を払う所である」

解説

この言葉は、都会とは平穏に暮らす市民をあたかも犯罪者や乞食のように扱い、その一方で窃盗犯の親分のような探偵(権力側の人間)に高い給料を支払う場所であるという、鋭い皮肉を込めた社会批評である。「掏摸の親分たる探偵」という表現は、権力や捜査機関が必ずしも正義の味方ではなく、時に市民を脅かす存在になり得ることを暗示している。

漱石がこのような表現を用いた背景には、明治期の都市警察制度や探偵業への不信感がある。当時の都会では、監視や取締りが強化される一方、権力側の腐敗や職権乱用も問題となっていた。漱石は、治安維持の名の下で市民の自由や尊厳が軽視される現象を痛烈に批判している。

現代でも、この視点は過剰な監視社会や治安維持名目の権限濫用に当てはまる。市民の安全を守るはずの制度が、市民を疑い、抑圧する方向に働くとき、その構造は漱石の描いた「都会」の姿と重なる。漱石のこの言葉は、権力と市民の関係を常に監視し、批判的に捉える必要性を教えている。

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