「西洋文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「西洋文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ」

解説

この言葉は、西洋文明の本質を不満足の感情に根差すものとして批判的に捉えた漱石の視点を示している。漱石は、確かに西洋文明は積極性や進取の精神に満ちており、物質的・技術的な発展を遂げていると認める一方で、その根底には常に現状への不満とさらなる進歩への渇望があると見抜いた。満足を知らぬ精神が文化を前進させる一因となる反面、永遠に安らぎを得られない宿命を抱えると考えたのである。

この見解は、漱石がロンドン留学で体験した西洋社会の印象とも重なる。明治期の日本は急速に西洋化を進めていたが、漱石は西洋文明を無条件に受け入れるのではなく、その背後にある精神的な不安や焦燥をも観察していた。物質的繁栄と精神的安定は必ずしも一致しないという洞察は、彼の文学や評論全般に通じるテーマである。

現代においても、技術革新や経済成長の裏で満足感を得られず、常に新しいものを求め続ける社会は珍しくない。漱石の言葉は、進歩の原動力と不満足の心理が表裏一体であるという現実を指摘し、文明の在り方を見直すきっかけを与えてくれる。

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