「碁を発明したものは人間で、人間の嗜好が局面にあらわれるものとすれば、窮屈なる碁石の運命はせせこましい人間の性質を代表して居ると云っても差支ない」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「碁を発明したものは人間で、人間の嗜好が局面にあらわれるものとすれば、窮屈なる碁石の運命はせせこましい人間の性質を代表して居ると云っても差支ない」
解説
この言葉は、人間の創造物にはその創造者の性質が反映されるという洞察を、囲碁を例に示したものである。碁石は碁盤という限られた空間の中で動かされ、その配置や制約は創った人間の発想や性質を表すとする。ここでいう「せせこましい人間の性質」とは、広大な自由よりも限られた枠内で秩序や勝敗を求める人間の傾向を指している。
この発想の背景には、明治から大正期にかけての日本社会がある。当時は産業化と都市化が進み、人々の生活は効率や規律を重んじる方向へ傾いていた。漱石は、囲碁という静かな知的遊戯にも、その時代特有の窮屈さや形式性が象徴的に現れると見ていた可能性が高い。
現代においても、この洞察は応用できる。例えばデジタルゲームやSNSの設計にも、開発者やユーザー社会の価値観が色濃く反映されている。囲碁の碁石が人間の性質を映すように、あらゆる創造物はその時代と人間性の鏡であり、それを読み解くことは創作や文化の本質を理解する手掛かりとなるのである。
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