「桀紂と云えば古来から悪人として通り者だが、二十世紀は此桀紂で充満して居るんだぜ。しかも文明の皮を厚く被ってるから小憎らしい」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「桀紂と云えば古来から悪人として通り者だが、二十世紀は此桀紂で充満して居るんだぜ。しかも文明の皮を厚く被ってるから小憎らしい」
解説
この言葉は、古代中国の暴君・桀(けつ)と紂(ちゅう)を引き合いに出し、近代社会にも彼らに匹敵する悪人が満ちているという痛烈な批判である。桀と紂は、それぞれ夏王朝と殷王朝を滅ぼすきっかけを作った残虐な王として歴史に名を残し、古来から悪の象徴とされてきた。漱石は、この象徴を用いて、二十世紀の社会が見かけこそ文明的だが、その裏には同様の腐敗や残虐性が潜んでいると指摘している。
重要なのは、ここで語られる「文明の皮」である。これは近代化によって人々が礼儀や制度で飾られ、外見上は洗練されているように見えるが、その内面には依然として権力欲、利己心、道徳的堕落が蔓延しているという意味である。むしろ、この文明の仮面が悪を覆い隠し、批判や抵抗を困難にしているため、「小憎らしい」と強調している。
現代社会にも通じる指摘であり、政治腐敗、経済的搾取、情報操作など、表面的には正当化された形で行われる悪は少なくない。漱石のこの言葉は、進歩や文明化の裏で潜行する悪に対する批判的眼差しを持ち続ける必要性を教えている。
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