「明治の代は男子と雖、文明の弊を受けて多少女性的になって居る」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「明治の代は男子と雖、文明の弊を受けて多少女性的になって居る」
解説
この言葉は、明治期の文明化・近代化が男性の気質や行動様式にも影響を与え、従来の男性像に比べて柔和で繊細な傾向が強まったという指摘である。ここでいう「女性的」とは、単に性差的特徴を指すのではなく、感受性や感情表現の豊かさ、柔軟性などを含む。一方で、漱石はこれを「文明の弊」と表現しており、必ずしも肯定的な意味だけでなく、武士的な剛毅さや実行力の衰退という側面も意識していると考えられる。
この発想の背景には、明治維新以降の生活様式や価値観の変化がある。都市化や教育の普及、西洋文化の流入は、礼儀や教養を重んじる風潮を広め、男性にも穏やかさや洗練が求められるようになった。しかし同時に、従来の積極性や自己犠牲的精神が弱まることを懸念する声もあった。漱石は、この二面性を文明の「功」と「罪」として捉えていた。
現代においても、この視点は一部で通用する。グローバル化や価値観の多様化によって、性別による気質の固定観念は薄れ、男性にも共感性や感情表現が重視される傾向がある。文明は人の性質を変える力を持ち、その変化は利点と同時に課題も伴う——この言葉は、そのバランスを見極める必要性を示している。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?
「夏目漱石」の前後の名言へ
申し込む
0 Comments
最も古い