「文学は人生其物である。苦痛にあれ、困窮にあれ、窮愁にあれ、凡そ人生の行路にあたるものは即ち文学で、それ等を嘗め得たものが文学者である」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「文学は人生其物である。苦痛にあれ、困窮にあれ、窮愁にあれ、凡そ人生の行路にあたるものは即ち文学で、それ等を嘗め得たものが文学者である」
解説
この言葉は、文学の本質を人生経験そのものと同一視する漱石の文学観を示している。文学は単なる想像や技巧の産物ではなく、苦痛や困窮、孤独や悲哀といった現実の体験を通じて形づくられるものである。そして、それらの試練を自ら味わい、理解した者こそが真の文学者であるという厳しい基準を提示している。
この考えの背景には、漱石自身の多難な人生経験がある。彼は留学中の孤独や神経衰弱、経済的困窮、家庭問題などを経験し、それらを小説や評論に反映させた。明治期の文学は、西洋文学の形式や技法を取り入れる一方で、作家個人の生きた体験をどのように作品に昇華させるかが重要視されていた。漱石は、人生の真実に触れた者だけが読者の心を動かせると信じていた。
現代においても、この言葉は重みを持つ。机上の理論や表層的な模倣ではなく、実際の苦楽を経た言葉こそが、読む者に深い共感と説得力を与える。文学とは人生の記録であり、その作者の歩んだ道そのものであるというこの視点は、創作を志す者への指針としても有効である。
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