「敬慕とは遠慮と評判と未知とが重なり合うとき発生する化物に候」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「敬慕とは遠慮と評判と未知とが重なり合うとき発生する化物に候」

解説

この言葉は、敬慕(深く敬い慕う感情)は必ずしも純粋な尊敬だけから成り立つものではなく、複数の要素が絡み合って生まれるという洞察である。ここで挙げられている「遠慮」は距離感やためらい、「評判」は他者から聞く評価や噂、「未知」は相手について直接知り得ない部分を指す。これらが重なると、実像ではなく理想化された人物像が形成されやすく、それが「化物」と表現されている。

歴史的にも、英雄視や偶像化はこのメカニズムで生まれることが多い。人々は実際に接したことのない人物を、評判と想像によって膨らませ、現実以上に神格化する傾向がある。しかし、それは必ずしも相手の実像とは一致せず、むしろ虚像を崇拝する結果となる。

現代においても、著名人やインフルエンサーに対する過剰な敬慕はSNSやメディアによって増幅されやすい。距離、噂、未知性が揃えば、人は簡単に「実在以上の存在」を作り上げてしまう。この言葉は、その心理構造を鋭く突いたものであり、敬慕の裏に潜む危うさを警告している。

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