「感情を発表せぬ事は日本人程熟練した者はない。第一男抔は泣き度ても泣かない。たまに泣くと男涙だと云う。泣き方に男性女性があるいのは日本許りであろう」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「感情を発表せぬ事は日本人程熟練した者はない。第一男抔は泣き度ても泣かない。たまに泣くと男涙だと云う。泣き方に男性女性があるいのは日本許りであろう」

解説

この言葉は、日本人特有の感情表現の抑制と、その文化的な意味合いを鋭く指摘している。特に男性に関して、泣きたい場面でも感情を押し殺す傾向が強く、それが美徳や精神的強さと結びつけられてきたことを示している。まれに涙を見せると、それは「男涙」と特別視され、感情表現の性差まで意識されている点がユニークである。

背景には、武士道や儒教的価値観に基づく忍耐・自制の美徳がある。感情を表に出さないことは、弱さを見せない姿勢や社会的秩序の維持に寄与すると考えられてきた。一方で、この抑制が過剰になると、個人の感情の健全な発露が阻まれ、心理的な負担や孤立感を生む危険も孕む。

現代社会では、グローバル化や価値観の多様化により、感情表現の自由が重視される傾向にある。しかし、この言葉は日本文化における感情統制の深い根を教えてくれると同時に、泣き方にまで性別的意味づけを与える特殊な文化観を浮き彫りにしている。

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