「夫婦なんてものは闇の中で鉢合せをする様なものだ。要するに鉢合せしないでも済む所をわざわざ鉢合せるんだから余計な事さ」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「夫婦なんてものは闇の中で鉢合せをする様なものだ。要するに鉢合せしないでも済む所をわざわざ鉢合せるんだから余計な事さ」
解説
この言葉は、夫婦関係の本質を皮肉とユーモアを交えて描いた比喩である。「闇の中で鉢合せ」という表現は、互いの素性や内面を十分に知らないまま、生活を共にすることの不確実さや予測不能さを示している。本来なら避けられる衝突や摩擦を、自ら進んで受け入れるのが結婚であり、その意味で「余計な事」としているのである。
この発想の背景には、漱石の人間観と近代的夫婦観への批評がある。明治期は恋愛結婚が広まり始めた時代だったが、必ずしも理想的な夫婦像が成り立つわけではなく、結婚生活の中で生じる摩擦や失望が多くの人に共通していた。漱石は、結婚を単なる幸福の制度とは見ず、人間同士の不可避な摩擦を内包する営みとして冷静に捉えていた。
現代においても、この比喩は鮮やかに通用する。結婚は、性格や価値観の異なる二人が同じ生活空間を共有する挑戦であり、衝突は避けがたい。それでも人は、理解や成長、情愛を求めてあえて「鉢合せ」に踏み込む。この言葉は、夫婦関係の複雑さと、それを選び取る人間の不可解さを、軽妙に言い表している。
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