「天下に何が薬だと云って己れを忘れるより薬な事はない」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「天下に何が薬だと云って己れを忘れるより薬な事はない」
解説
この言葉は、心身の癒しや精神の安定にとって、最も効果的なのは自分自身のことを忘れることであるという人生訓を示している。ここでいう「薬」とは、病や苦悩を和らげる手段の比喩であり、「己れを忘れる」とは自己中心的な思考や悩みに囚われない状態を指している。つまり、過剰な自己意識から解放されることが最大の安らぎとなるというのである。
漱石の時代は、個人主義の台頭と共に自己の在り方を深く考える知識人が増え、同時に神経衰弱や心の病に悩む人も多かった。漱石自身も神経症に苦しみ、その経験から自己への執着が苦悩を増幅させることを痛感していた。彼は、視線を外界や他者に向けることで、自己の悩みを相対化し、心を軽くできると考えたのである。
現代においても、この考えは過剰な自己分析やストレスによる心の疲弊に対する有効な対処法として通じる。趣味や奉仕活動、他者との交流に没頭することで、自分の悩みから距離を置くことができる。漱石のこの言葉は、精神的な健康を保つための普遍的な方法論を端的に表している。
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