「大凡人と喧嘩をするのは一分のうちにも出来る。然し人を閉口させるには十年かかるか二十年かかるか、やり方では生涯凹ませる事は出来ないものだ」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「大凡人と喧嘩をするのは一分のうちにも出来る。然し人を閉口させるには十年かかるか二十年かかるか、やり方では生涯凹ませる事は出来ないものだ」
解説
この言葉は、感情的な衝突は容易である一方で、相手を心から納得させることは極めて困難であるという人間関係の本質を述べたものである。短時間で口論を起こすのは簡単だが、相手を理屈や態度で真に言い負かし、長期的にその意見を変えさせるには、長年にわたる努力や緻密な戦略が必要となる。漱石が生きた明治期は、西洋の思想や学問が急速に流入し、議論や討論の場も増えたが、単なる口論と本質的な説得との間には大きな隔たりがあった。
さらにこの言葉は、人の信念や性格は容易に変わらないという現実を踏まえている。たとえ十年、二十年かけても、相手の内心や価値観を完全に変えるのは難しく、場合によっては生涯をかけても不可能であることもある。これは人間の誇りや自己防衛本能、そして文化的背景の強さを示しており、漱石自身の観察眼と人間理解が反映されている。
現代においても、この教えはSNSの論争や職場の意見対立にそのまま当てはまる。瞬間的に相手を論破することはできても、それが相手の意識や行動の持続的な変化に繋がることは稀である。真の説得には、長期的な信頼関係の構築や、相手の立場への理解が不可欠であり、この姿勢がなければ「閉口させる」ことは到底できないのである。
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