「凡て運命が脚色した自然の事実は、人間の構想で作り上げた小説よりも無法則である。だから神秘である」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「凡て運命が脚色した自然の事実は、人間の構想で作り上げた小説よりも無法則である。だから神秘である」

解説

この言葉は、現実の出来事は人間が作る物語よりも予測不可能であり、その不規則さが神秘性を生むという漱石の洞察を示している。「運命が脚色した自然の事実」とは、偶然や必然が複雑に絡み合って生じる現実の出来事を指す。一方、小説は作者の構想のもとで展開するため、一定の法則や筋道がある。しかし現実は必ずしも筋書き通りには進まず、その無秩序さこそが人間にとって不可解で魅力的な神秘となる。

この背景には、漱石の文学観と人生観がある。明治期の小説は、筋の整合性や合理的展開を重視する傾向があったが、漱石は現実は物語以上に不規則で理不尽であることをよく理解していた。そのため、現実を描く文学においても、完全な秩序よりも、偶然や矛盾を含む生の複雑さを反映させることが重要だと考えていた。

現代においても、この指摘は的確である。ドキュメンタリーや報道において、現実の事件は小説や映画の脚本よりも奇妙で予測不能な展開を見せることが多い。漱石のこの言葉は、現実の不確定性と神秘性を理解することが、人間や世界を見るうえで欠かせない視点であることを教えている。

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