「凡て声は聴いているうちにすぐ消えるのが常です。だから其所には現在がすぐ過去に変化する無常の観念が潜んでいます」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「凡て声は聴いているうちにすぐ消えるのが常です。だから其所には現在がすぐ過去に変化する無常の観念が潜んでいます」

解説

この言葉は、音や声が瞬く間に消えていく性質の中に、現在が過去へと移ろう無常の感覚が秘められているという漱石の洞察を示している。声は発せられた瞬間から消滅に向かい、残るのは記憶だけである。この現象は、時間の流れと儚さを象徴する具体的な例として提示されている。

この背景には、漱石が東洋的な無常観と西洋的な感覚表現の双方に通じていたことがある。明治期は急速な近代化の中で時間の流れが加速し、人々の生活は変化に満ちていた。漱石は、日常の何気ない現象――例えば声が消えるというありふれた事実――の中に、人生や時間の本質的な儚さを見いだしている。

現代においても、この感覚は普遍的である。会話、音楽、環境音など、声や音はその瞬間にしか存在せず、録音技術があっても「今響いている音」は二度と同じ形で再現できない。漱石のこの言葉は、日常の中に無常を見つける感受性の大切さを教えている。

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