「凡て今の世の学問は皆形而下の学で一寸結構な様だが、いざとなるとすこしも役には立ちません」

夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
夏目漱石の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、英文学者

原文

「凡て今の世の学問は皆形而下の学で一寸結構な様だが、いざとなるとすこしも役には立ちません」

解説

この言葉は、現代の学問の多くが物質的・実証的な領域(形而下の学)に偏り、見た目には立派に見えても、本質的・根源的な問題には役立たないという批判を表している。「形而下の学」とは、哲学的な形而上学に対する言葉で、物理的・経験的な事象を対象とする学問を指す。漱石は、それらが生活や文明の発展に寄与しても、人間存在の根本的な意味や精神的問題には答えを与えられないと考えていた。

この背景には、明治期の日本が西洋科学や近代的教育制度を急速に導入し、理工系や実用的知識を重視していた状況がある。その一方で、人間の倫理や生き方、精神的価値についての探求は軽視されがちだった。漱石は、物質的繁栄だけでは人間は幸福になれないという危機感を抱いていた。

現代においても、この指摘は鋭い。高度な科学技術や実用知識が発展しても、倫理問題や人生の意味といった根源的課題は依然として未解決である。漱石のこの言葉は、学問の真価は実用性だけでなく、人間の精神や存在の本質に迫る力にあるという視点を思い起こさせる。

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