「人は、漸くの思いで刻下の志を遂げると、すぐ反動が来て、却て志を遂げた事が急に恨めしくなる場合がある」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「人は、漸くの思いで刻下の志を遂げると、すぐ反動が来て、却て志を遂げた事が急に恨めしくなる場合がある」
解説
この言葉は、人間の心理における達成後の反動を鋭く指摘している。長く苦労して目標を成し遂げた直後、満足感よりも空虚感や後悔が先に立つことがある。この現象は、達成までの過程で高まった緊張や期待が、一気に解放されることで心理的な揺り戻しが起こるためである。さらに、目標達成によって新たな責任や環境の変化が生じ、それが重荷として感じられることもある。
この洞察の背景には、漱石自身の人生経験と近代人の精神構造がある。彼は留学や作家活動などで大きな成果を得た一方、その直後に精神的な疲弊や虚無感に襲われた時期を持っていた。近代化の時代、個人の努力と成果は重視されたが、その裏で「成し遂げた後の孤独」や「目標の喪失」が多くの人に訪れていた。この言葉は、その普遍的な心理を簡潔に表現している。
現代においても、受験や昇進、長期プロジェクトの完遂といった節目で同じ現象は見られる。努力の末に掴んだ成果が、必ずしも長続きする幸福をもたらさないという現実は、次なる目標の設定や自己理解の重要性を教えている。この言葉は、達成の瞬間にこそ心を整え、次の生き方を考えるべきだという示唆を含んでいる。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?
「夏目漱石」の前後の名言へ
申し込む
0 Comments
最も古い