「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時迄も続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなる丈の事さ」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時迄も続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなる丈の事さ」
解説
この言葉は、一度起きた出来事や関係は完全に「終わる」ことはなく、形を変えて存続し続けるという人生観を示している。人はしばしば、問題や出来事を「片付いた」と思い込みたがるが、実際にはその影響や余韻が消えることはない。ただし、時間の経過や状況の変化によって、元の形が見えにくくなり、本人も周囲もそれと気づかなくなるだけである。
この発想の背景には、漱石の人間関係と時間に対する洞察がある。明治期の社会は急速に変化していたが、人間の感情や記憶はそう簡単には切り替わらない。漱石は、過去の出来事がその後の言動や心理に微妙に影響し続ける様子を、作品や随筆で繰り返し描いている。過去は単に過ぎ去るのではなく、形を変えて現在に溶け込み続けるという視点である。
現代においても、この感覚は多くの人に当てはまる。人間関係のしこり、経験からくる価値観の変化、社会的出来事の余波などは、時間が経っても根本的には消えず、異なる形で再び現れることがある。出来事の影響は「終わる」のではなく「変わる」——この言葉は、時間と記憶の複雑な関係を鋭く言い表している。
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