「もし死が可能であるならば、それは発作の絶高頂に達した一瞬にあるだろう」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「もし死が可能であるならば、それは発作の絶高頂に達した一瞬にあるだろう」
解説
この言葉は、死を単なる終末ではなく、感情や意識が極限に達した瞬間に訪れるものとして捉える独特な死生観を示している。「発作の絶高頂」とは、肉体的・精神的興奮や苦痛、あるいは感情の爆発が最高潮に達した刹那を指す。その極限状態においてこそ、死はもっとも「可能」になる、つまり自然に訪れ得るとする視点である。
この発想の背景には、漱石の病歴と死への哲学的関心がある。漱石は生涯にわたり胃潰瘍や神経衰弱などの持病に苦しみ、しばしば激しい発作や痛みに見舞われた。その体験から、死は長く静かに近づくものというより、ある瞬間の臨界点で一気に訪れるものという感覚を抱いたと考えられる。また、この言葉には死を恐怖としてではなく、一つの到達点として見つめる冷静さも感じられる。
現代においても、この感覚は医学的・心理的な観点から理解できる。急性の発作や事故、極度のストレス状態などでは、生理的な限界を超えた瞬間に生命活動が途切れることがある。生と死の境目は、長い道の果てではなく、一瞬の臨界に存在する——この言葉は、その境界の鋭さと不可避性を鮮やかに表している。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?
「夏目漱石」の前後の名言へ
申し込む
0 Comments
最も古い