「どんな舟でも御乗んなさいと云われれば、乗らずに居られない。大抵の嘘は渡頭の舟である。あるから乗る」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「どんな舟でも御乗んなさいと云われれば、乗らずに居られない。大抵の嘘は渡頭の舟である。あるから乗る」
解説
この言葉は、人は提示された機会や情報に対して、必要性を吟味するよりも、あるから利用し、あるから信じてしまう傾向があるという人間心理を皮肉っている。「渡頭の舟」は、川を渡すために常に備えられている舟を指し、「あるから乗る」という行動は、嘘や根拠のない話でも、提示されればつい受け入れてしまう様を表す比喩である。
漱石の時代は、新聞や雑誌が急速に普及し、事実かどうか不確かな情報も世間に広まっていた。漱石は、人が情報や状況に対して受動的になりやすく、深く考えずに流される危うさを観察し、この比喩で批判している。
現代でも、この洞察はSNSやインターネットで拡散されるフェイクニュースや噂にそのまま当てはまる。情報が目の前にあるだけで、真偽を確かめずに信じたり共有したりしてしまう行動は、まさに「あるから乗る」心理である。漱石のこの言葉は、情報社会における受動性の危険性を鋭く突いている。
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