「何事も、穏やかに、腹立たしいことはそれとなく気づかせ、恨むべきことも、相手を憎ましく思わせないようにほのめかして伝えれば、その分、相手の情も深まることでしょう」

- 970-980年頃?~1014-1031年頃?(諸説あり)
- 日本出身
- 作家、歌人
原文
「すべて、よろづのこと、なだらかに、怨ずべきことをば、見知れるさまにほのめかし、恨むべからむふしをも、憎からずかすめなさば、それにつけて、あはれもまさりぬべし」
現代語訳
「何事も、穏やかに、腹立たしいことはそれとなく気づかせ、恨むべきことも、相手を憎ましく思わせないようにほのめかして伝えれば、その分、相手の情も深まることでしょう」
解説
この言葉は、人間関係における感情表現の巧みさを説いている。紫式部が生きた平安時代の宮廷社会は、直接的な批判や感情の露出が避けられ、婉曲表現と奥ゆかしさが美徳とされた。ここでは、相手に不快感を与えずに自分の気持ちを伝えることで、むしろ相手との情愛を深められるという、極めて洗練された人間関係の技法が語られている。
現代においても、この言葉はコミュニケーションの本質を示す。ビジネスや家庭、恋愛など、どの関係においても、感情をぶつけるだけでは対立を深める。一方で、穏やかでさりげない指摘や注意は、相手のプライドを傷つけず、良好な関係を保ちやすい。これは、現代心理学における「アサーティブ・コミュニケーション」にも通じる考え方である。
さらに、この言葉は優しさと賢さを兼ね備えた生き方を教えている。強い言葉で不満をぶつけることは簡単だが、相手を傷つけずに意思を示すには、深い思慮と感性が必要である。この名言は、単なる対人マナーを超え、調和と情愛を生み出す高度な人間関係の知恵を伝えており、現代社会においても極めて有効な指針となるのである。
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