「私たちはエリヤ・ムハンマドの教えに従う者として、統合を強制されることを望まない。統合は間違っている。私たちは白人と一緒に暮らしたくない――ただそれだけだ」

モハメド・アリの名言・格言・警句(画像はイメージです)
モハメド・アリの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1942年1月17日~2016年6月3日
  • アメリカ合衆国出身
  • プロボクサー、社会運動家、人道主義者

英文

”We who follow the teachings of Elijah Muhammad don’t want to be forced to integrate. Integration is wrong. We don’t want to live with the white man; that’s all.”

日本語訳

「私たちはエリヤ・ムハンマドの教えに従う者として、統合を強制されることを望まない。統合は間違っている。私たちは白人と一緒に暮らしたくない――ただそれだけだ」

解説

この言葉は、モハメド・アリが「ネイション・オブ・イスラム(黒人イスラム教徒団体)」の教えに忠実だった時期に語ったものであり、その中で提唱された「分離主義的思想」を明確に表明している。ネイション・オブ・イスラムの指導者エリヤ・ムハンマドは、白人社会に対して深い不信感を抱いており、黒人の精神的・社会的独立を主張していた。アリはこの思想に共鳴し、公民権運動における主流の「人種統合路線」とは一線を画す立場を取った

この発言は、当時のアメリカにおける黒人差別の過酷な現実と、それに対する強烈な対抗意識を背景としている。アリにとって、統合とは平等ではなく、支配される側としての黒人の同化であると映った。そのため、共存ではなく、自立的な黒人社会の形成こそが自由への道であると信じた。これは一部の黒人活動家に支持された考え方であったが、公民権運動の中でも特に論争を呼んだ思想でもある。

現代の視点から見ると、この言葉は単なる排他主義と誤解される可能性があるが、実際には当時の黒人コミュニティが直面していた絶望的状況に対する一つの「自衛的な選択肢」であった。モハメド・アリは後年にかけてより包括的な姿勢を示すようになっていくが、この言葉は、抑圧に対する極限の拒絶反応としての歴史的文脈を理解しなければ、正しく受け止めることはできない。それは黒人が自身の尊厳をどのように守ろうとしたかを示す重要な歴史的証言である。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?


申し込む
注目する
guest


0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る