「イギリス政府は当然のことながら、自らが最もよく知り、最も優れていると考える民主的憲法の形をインドに望むであろう。その下では、国の政府は選挙の結果に応じて、いずれかの政党に委ねられる」

ムハンマド・アリー・ジンナー(画像はイメージです)
ムハンマド・アリー・ジンナー(画像はイメージです)
  • 1876年12月25日~1948年9月11日(71歳没)
  • パキスタン出身
  • 政治家、弁護士、パキスタン建国の父、初代総督

英文

”The British Government very naturally would like to see in India the form of democratic constitutions it knows best and thinks best, under which the Government of the country is entrusted to one or other political party in accordance with the turn of elections.”

日本語訳

「イギリス政府は当然のことながら、自らが最もよく知り、最も優れていると考える民主的憲法の形をインドに望むであろう。その下では、国の政府は選挙の結果に応じて、いずれかの政党に委ねられる」

解説

この言葉は、イギリスの植民地支配から独立へ向かう過程において、統治制度のあり方をめぐる根本的な問題を指摘している。ジンナーは、イギリスがインドに適用しようとした「西欧型政党政治モデル」が、インド社会の現実には必ずしも適さないと認識していた。つまり、単純な政権交代制が多宗教・多民族国家にそのまま導入されれば、多数派による少数派の支配という危険が生じると警告していたのである。

歴史的背景として、イギリスは議会制民主主義を誇り、それを「文明的統治」として植民地に広めようとした。しかしインドでは、ヒンドゥー教徒が多数を占め、ムスリムや他の少数派が政治的に不利な立場に立たされる可能性が高かった。ジンナーの主張は、形式的な民主主義ではなく、多様な共同体の権利を保障する制度設計こそが必要であるという点にあった。この視点が後に「二民族理論」やパキスタン建国へとつながっていく。

現代においても、この言葉は重要な示唆を持つ。民主主義の形式だけを移植しても、社会の実情に合わなければ安定した統治は実現しない。たとえば中東やアフリカにおける制度導入の失敗は、しばしば地域の伝統や宗教的多様性を無視した結果である。ジンナーの指摘は、真の民主主義とは単なる選挙制度の導入ではなく、異なる共同体の共存を可能にする仕組みの構築にあるという普遍的な教訓を示している。

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