「薬は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になることのある物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけようとするようになる」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「薬は勿論の事、人生に必要な嗜好品に毒になることのある物は幾らもある。世間の恐怖はどうかするとその毒になることのある物を、根本から無くしてしまおうとして、必要な物までを遠ざけようとするようになる」

解説

この言葉は、有害性の一面だけを見て物事を全面的に排除する危険性について述べている。薬や嗜好品のように、本来は有益または生活を豊かにするものでも、過剰摂取や誤用によって毒となることがある。しかし世間はその危険性に過敏になると、有害となる可能性があるという理由だけで、それ自体を根こそぎ排除しようとする傾向を持つと森鴎外は指摘している。

この考えの背景には、明治から大正期にかけての社会改革や規制の風潮がある。当時、西洋から新しい薬品や嗜好品(コーヒー、煙草、アルコールなど)が流入する中で、それらの害に対する議論も盛んだった。鴎外は医師として、用い方次第で有益にも有害にもなるという中庸の視点を持っており、過剰な恐怖や道徳的潔癖が、かえって人々の生活から必要な潤いや治療手段を奪うことを懸念していた。

現代でも、この警句は規制や社会的判断に通じる。食品添加物、電子機器、オンラインサービスなどは、危険性や依存性が指摘されると禁止や制限の動きが強まるが、それと同時に利便性や恩恵まで失われる可能性がある。害と利の両面を見極め、適切にコントロールする姿勢こそが、恐怖に流されない健全な判断につながるという点で、この言葉は今も有効である。

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