「芸術の認める価値は、因襲を破る処にある。因襲の圏内にうろついている作は凡作である。因襲の目で芸術を見れば、あらゆる芸術が危険に見える」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「芸術の認める価値は、因襲を破る処にある。因襲の圏内にうろついている作は凡作である。因襲の目で芸術を見れば、あらゆる芸術が危険に見える」
解説
この言葉は、芸術の本質と因襲(古くからの慣習や価値観)との対立を端的に示している。森鴎外は、芸術の価値は既存の形式や考え方を打ち破るところにあり、慣習の範囲内で作られたものは凡庸にならざるを得ないと述べる。そして、因襲的な視点で芸術を評価すれば、その革新性や挑戦性が「危険」に見えてしまうと警告している。ここでいう「危険」とは、既存秩序や価値観を揺るがす恐れを指す。
この発想の背景には、明治から大正期にかけての日本の文化的転換がある。西洋美術や文学の流入は、伝統的な美意識や規範との衝突を生み、しばしば批判や検閲の対象となった。鴎外は作家として、また文化人として、芸術の革新性が社会に理解されにくい現実を身をもって体験しており、この言葉はその問題意識を反映している。
現代においても、この考えは変わらず有効である。新しい芸術表現や実験的作品は、しばしば「過激」「理解不能」と評されるが、それは因襲の枠から見た評価に過ぎない。芸術の進化は、既存の価値観を揺さぶる挑戦の中から生まれるというこの警句は、創作に携わる者だけでなく、鑑賞する側にも重要な視点を与える。
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