「男子は生理上に、女子よりも貞操が保ちにくく出来ている丈は事実らしいのだね。併し保つことが不可能でもなければ、保つのが有害でも無論ないということだ」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「男子は生理上に、女子よりも貞操が保ちにくく出来ている丈は事実らしいのだね。併し保つことが不可能でもなければ、保つのが有害でも無論ないということだ」
解説
この言葉は、男女の生理的差異と道徳的行動の可能性について述べている。森鴎外は、男性は生理的条件から見て女性よりも貞操を保つことが難しいらしい、という事実を認めつつも、それは決して不可能ではなく、また保つことが害になるわけでもないと断言している。つまり、生物学的傾向があっても、それを理由に道徳的規範を放棄すべきではないという立場である。
この発想の背景には、明治から大正期にかけての性道徳観の議論がある。当時、西洋医学や生理学の知識が日本に導入され、性行動における男女差が「科学的事実」として語られることが増えた。しかし鴎外は、そうした生物学的説明を免罪符とせず、倫理や自制心によって行動を律することの可能性と必要性を強調している。
現代においても、この指摘は性行動や倫理の議論において重要である。生物学的傾向や衝動は確かに存在するが、それを理由に行動を正当化することはできない。本能と社会的責任のバランスを取ることが、人間社会における成熟した態度であるというこの言葉は、時代を超えて通用する倫理観を示している。
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