「死ハ一切ヲ打チ切ル重大事件ナリ。奈何ナル官権威力ト雖此ニ反抗スル事ヲ得ズト信ズ。余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「死ハ一切ヲ打チ切ル重大事件ナリ。奈何ナル官権威力ト雖此ニ反抗スル事ヲ得ズト信ズ。余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」

解説

この言葉は、死の絶対性と自己の本質的な在り方について述べたものである。森鴎外は、死は人生の全てを終わらせる重大な出来事であり、どのような官職や権力をもってしても抗うことはできないと断言している。そして、自らの死に際しては、軍医総監や作家といった肩書きではなく、石見国出身の一人の人間「森林太郎」として死にたいという本質的な自己への回帰を望んでいる。

この発言は、鴎外の晩年の思想や人生観をよく表している。彼は陸軍軍医総監という高い地位にありながらも、死を迎えるときには地位や名声を超えて、生まれた土地と本来の自分に立ち返ることを重視した。明治から大正期にかけて、国家や組織への忠誠が強く求められる社会において、このような個人本位の死生観は特異であり、深い自己認識に基づくものであった。

現代においても、この言葉は強い意味を持つ。社会的肩書きや外的評価は人生の一部でしかなく、死の前にはすべてが剥ぎ取られる。だからこそ、最後に残る「自分とは何か」という問いに答えられる生き方が重要である。死に臨んで肩書きではなく本名で語れる人生という鴎外の望みは、時代を超えて普遍的な価値を持っている。

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