「元来学問をしたものには、宗教家の謂う『信仰』は無い」

森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
森鴎外の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
  • 日本出身
  • 小説家、評論家、翻訳家、軍医

原文

「元来学問をしたものには、宗教家の謂う『信仰』は無い」

解説

この言葉は、学問と宗教的信仰の本質的な違いを指摘している。ここでいう「宗教家の謂う信仰」とは、論証や経験によらず、権威や教義を疑わずに受け入れる心の在り方を意味する。森鴎外は、学問を修めた者は知識や真理を検証や論理によって確かめようとするため、盲目的な信仰を持ち得ないと述べている。これは信仰を否定するというより、学問が前提とする態度と宗教的信仰の性質が相容れないという認識である。

この発想の背景には、明治から大正期にかけての日本の思想的潮流がある。西洋の近代科学や合理主義が流入し、宗教的権威に依存しない価値観が広まりつつあった。鴎外自身、軍医として科学的思考を身につける一方で、文学者として人間精神の多様な在り方を観察しており、科学的探究心と宗教的信仰心の間にある根本的な立場の差を明確に意識していた。

現代においても、この指摘は議論を呼ぶテーマである。科学者や研究者が経験的証拠に基づく思考を重視する一方、宗教的信仰は証拠を超えた領域に価値を見出す。そのため、両者を併せ持つことは容易ではないが、批判的思考と精神的価値観をどう共存させるかは今もなお重要な課題であり、この言葉はその出発点となる問いを投げかけている。

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