「アワンチュウルの心持は、若い人には、男と女とを問わず、多少ある。花見に行く。芝居に行く。花を見たり、芸を見たりするばかりではない。人を見る。それよりは人に見て貰う」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「アワンチュウルの心持は、若い人には、男と女とを問わず、多少ある。花見に行く。芝居に行く。花を見たり、芸を見たりするばかりではない。人を見る。それよりは人に見て貰う」
解説
この言葉は、自己顕示欲と他者からの承認欲求について述べたものである。「アワンチュウル」とはフランス語の「avant jour(アヴァンジュール)」がなまった外来語とされ、外見や立ち振る舞いで人目を引きたい気持ちを指している。花見や芝居といった催しは、本来は景色や芸を楽しむためのものであるが、若い人々にとっては自分を人に見せる舞台でもあったという指摘である。
森鴎外がこのような観察を示した背景には、明治から大正期の都市文化の発展がある。当時、都市部では社交の場や娯楽が急増し、男女が外出して交流する機会が拡大した。人々は単に催し物を楽しむだけでなく、服装や態度で自己を演出し、「人からどう見られるか」を強く意識する文化が芽生えていた。この言葉は、その風潮を冷静に描写したものである。
現代でも、この心情はSNSや街中でのファッション文化に見られる。例えば、イベントや旅行先で写真を撮り、景色や芸術以上に自分がそこにいる姿を人に見せることに重きを置く傾向がある。鴎外の指摘は、時代や技術が変わっても、人間が持つ承認欲求の普遍性を示すものであり、その視点は今なお示唆に富む。
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