「けふなり。けふなり。きのふありて何かせむ。あすも、あさても空しき名のみ、あだなる声のみ」

- 1862年2月17日~1922年7月9日(60歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、翻訳家、軍医
原文
「けふなり。けふなり。きのふありて何かせむ。あすも、あさても空しき名のみ、あだなる声のみ」
解説
この言葉は、人生の価値を「今」という瞬間に置く思想を強く表している。「けふなり。けふなり」という反復は、現在こそが唯一確かなものであるという確信を示す。過去(きのふ)は既に取り戻せず、未来(あす、あさて)も不確かであり、名声や評判といった形で残るものは虚しいと断じている。ここには、名誉や噂よりも、生きている今をどう使うかが大切だという核心がある。
この思想は、森鴎外が生きた明治から大正期の社会変動とも関係が深い。当時、日本は急速な近代化と国際化の中で、過去の伝統と未来への理想に引き裂かれる状況にあった。鴎外は歴史小説や随筆の中で、しばしば時間や人生の有限性をテーマにし、現在を生きることの切実さを説いている。この一文も、儚さを伴った現在至上主義的な感覚を漂わせている。
現代においても、この言葉は大きな示唆を与える。過去の栄光や失敗に囚われすぎても、未来の理想や評価を追い求めすぎても、肝心の「今」が空虚になる。仕事、学び、人間関係のいずれにおいても、確実に存在する時間は現在だけであるという認識は、限りある人生を充実させるための出発点となる。
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