「わたくしという現象は仮定された有機交流電灯のひとつの青い照明です」

宮沢賢治(画像はイメージです)
宮沢賢治(画像はイメージです)
  • 1896年8月27日~1933年9月21日(37歳没)
  • 日本出身
  • 詩人、童話作家、農業指導者

原文

「わたくしという現象は仮定された有機交流電灯のひとつの青い照明です」

解説

この言葉は、宮沢賢治の「春と修羅」の一節であり、自己という存在の仮象性と非個人的な本質を表す極めて象徴的な表現である。ここでの「現象」とは、一時的に現れては消える、仮の姿としての自己を指し、「有機交流電灯」は生命あるもの(有機)とエネルギーの循環(交流)を組み合わせた、独自のメタファーである。つまり賢治は、自分という存在が宇宙的・自然的な大きな流れの一部であり、永続的な実体ではないという思想を語っている。

「青い照明」という表現には、冷静で透明感のある輝き、すなわち激情ではなく静謐な奉仕の光を宿しているという含意がある。それは自己主張ではなく、他を照らすために存在する一灯のような生き方を意味しており、個人の消滅と全体への合一という、仏教的・宇宙論的ビジョンを端的に表現している。

この言葉は、現代においても「自我の絶対視」から一歩引いて、より大きな世界との関係性の中で自分を捉える思考を促す。自己の力を誇るのではなく、自らの役割を小さくても輝く光として受け入れ、果たすこと。それは、個人の儚さと同時に、その光の尊さをともに伝える宮沢賢治の生の哲学を象徴しているのである。

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