「かなしみはちからに、欲りはいつくしみに、いかりは智慧にみちびかるべし」

- 1896年8月27日~1933年9月21日(37歳没)
- 日本出身
- 詩人、童話作家、農業指導者
原文
「かなしみはちからに、欲りはいつくしみに、いかりは智慧にみちびかるべし」
解説
この言葉には、人間の内面にある否定的な感情を、より高次の徳へと昇華させるべきであるという、宮沢賢治の倫理的・宗教的思想が端的に表れている。彼は仏教、特に法華経の教えに深く傾倒しており、人間の感情や煩悩を否定するのではなく、それを変容させる道を説いていた。ここでの「導かるべし」は、自然にそうなるのではなく、自らの意志と修養によってそうあらねばならないという強い自覚と責任を示す言い回しである。
「悲しみは力に」とは、失意や喪失をただの絶望で終わらせず、それを生きる原動力に変えることを意味する。宮沢自身、妹トシの死を経験し、その深い悲しみを作品創作と信仰の糧に昇華させている。「欲り(ほっし)」は煩悩の象徴であるが、それを「慈しみ」に変えることで、自己中心的な欲望を他者への愛や思いやりに変える可能性が語られている。そして「怒り」は破壊的な感情である一方、それを冷静な判断と洞察を生む智慧に導くことで、正義や改革の力ともなり得る。
この教えは、現代社会においても深く通用する。SNSや日常生活の中で生じる悲しみ・欲望・怒りにどう向き合うかは、多くの人にとって課題である。賢治の言葉は、それらを抑え込むのではなく、自覚的に変容させていく生き方を示しており、感情を力に変える知恵と意志の重要性を教えてくれる。
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