「それは生身の人間が愛だの正義だのって言ったら我慢できないけども、絵で描いたものがやってるぶんにはーーまあ、そのぶんだけ希薄だから許せるとか、観てる側が武装解除できるとかね、『そんなことあり得ねーよ』とか言わないで、まあとりあえず観てみようかという気になるっていう」
- 1941年1月5日～
- 日本出身
- アニメーション監督、映画監督、脚本家、スタジオジブリ共同創設者
原文
「それは生身の人間が愛だの正義だのって言ったら我慢できないけども、絵で描いたものがやってるぶんにはーーまあ、そのぶんだけ希薄だから許せるとか、観てる側が武装解除できるとかね、『そんなことあり得ねーよ』とか言わないで、まあとりあえず観てみようかという気になるっていう」
出典
解説
この言葉では、宮崎駿がアニメーションという表現形式の強みを語っている。生身の人間が愛や正義を語ると説教的になったり拒絶されやすいが、絵として描かれたキャラクターが語ることで、その価値観が希薄に見えながらも受け入れられる余地が生まれるという指摘である。観客の心の防御を緩めることができる点が、アニメの力だと捉えられている。
この視点は、アニメーションを単なる子供向けの娯楽と見なさず、人間の感情や思想にアプローチするための独自の媒体として理解していることを示している。現実では重くなりすぎるテーマも、絵によって「ちょっと距離のある形」で提示することで、観客の想像力に委ねる余裕を作る。そうすることで、観客は自然と武装解除され、受け入れる姿勢を持ちやすくなるのである。
現代社会では、価値観の衝突や言葉の強さが問題化しがちである。しかしこの名言は、絵であるがゆえに可能となる柔らかな説得力と感情喚起の仕組みを明らかにしている。直接的な主張ではなく、物語や表現を通して心を開かせる姿勢こそが、アニメーションの本質であり、宮崎駿の作品が世代を超えて受け入れられてきた理由でもある。
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