「年老いた身には、財産や領地を持とうとする心はない」

宮本武蔵(画像はイメージです)
宮本武蔵(画像はイメージです)
  • 1584年頃~1645年6月13日
  • 日本出身
  • 剣豪、兵法家、芸術家

原文

「老身に財宝所領もちゆる心なし」

現代語訳

「年老いた身には、財産や領地を持とうとする心はない」

解説

この言葉は『独行道』に記されたものであり、宮本武蔵が晩年に至っても物質的な富や土地などに執着しない精神を明確に表した一節である。「老身」とは年老いた自分自身を指し、「財宝所領もちゆる心なし」とは、金銀財宝や土地・領地などを所有しようとする欲がないという意味である。すなわち、人生の終盤においても、なお一貫して無欲・無所有を貫くという姿勢が表現されている。

武蔵は、戦国の乱世を生き抜きながら、領地や仕官に恵まれる機会もあった人物であるが、名声や地位を追わず、あくまで剣と道を求めて孤高に生きた。この言葉からは、そうした彼の選択が一時の感情や利得によるものではなく、老境に至ってもなお変わらぬ信念であったことが読み取れる。特に、武士にとっては所領の有無が社会的地位と直結する時代であったことを思えば、それを断ち切る決断は極めて特異で高潔なものである

現代においても、この言葉は物質主義に流されがちな社会に対して大きな問いを投げかける。老後の不安や財産への執着が語られる中で、武蔵のように人生の価値を物や地位ではなく、精神的な充実や信念の継続に見出す生き方は、ひとつの理想である。「老いてなお清貧にして道を守る」その姿勢は、今なお尊敬と学びに値する

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