「神は人間の最後の言いのがれであり、逆説とは、もしかすると神への捷径だ」

- 1925年1月14日~1970年11月25日
- 日本出身
- 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
- 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。
原文
「神は人間の最後の言いのがれであり、逆説とは、もしかすると神への捷径だ」
解説
この言葉は、三島由紀夫が人間と神、そして逆説的思考の関係を鋭く見つめたものである。神は、論理や理性が行き詰まったときの人間の最後の逃げ場であり、一方で逆説――つまり論理では割り切れない矛盾を受け入れる態度――が、むしろ神に至るための最も近道なのかもしれないという考えが示されている。ここでは、合理性を超えた領域にこそ真理があるという深い認識が語られている。
三島は、近代的な合理主義や無神論の空虚さに敏感であり、人間の理性が到達できない場所にこそ、本当の存在の根源があると考えていた。論理的に神を否定するよりも、逆説や矛盾を受け入れる柔らかな精神こそが、神的なものに至る可能性を開くとするこの言葉は、三島が持っていた絶対的なものへのあこがれと、それに至るための精神的な運動を象徴している。
現代においても、この指摘は大きな意義を持つ。たとえば、合理性が極度に重視される社会において、人間の理屈を超えた存在や意味にどう向き合うかは大きな課題である。三島のこの言葉は、合理性を超えた直感や逆説を恐れずに受け止めることこそが、人間存在の深みを拓くと教え、論理では到達できない真理への謙虚な姿勢を静かに、しかし力強く促しているのである。
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