「悲しいことに、われわれは、西欧を批評するというその批評の道具をさえ、西欧から教わったのである」

三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
  • 1925年1月14日~1970年11月25日
  • 日本出身
  • 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
  • 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。

原文

「悲しいことに、われわれは、西欧を批評するというその批評の道具をさえ、西欧から教わったのである」

解説

この言葉は、三島由紀夫が日本近代化の根本的な屈折を痛烈に批判したものである。西欧文明を批判しようとするときでさえ、その批判のための理論や方法までもが西欧から借りてきたものであるという深い自己矛盾が指摘されている。ここでは、主体的な精神の不在と、根源的な文化的依存が悲しみを込めて語られている。

三島は、戦後日本における西欧化と精神的空洞化に強い危機感を抱いていた。物質的な復興を遂げる一方で、精神面では西欧の模倣に終始し、自らの伝統や価値観を深く掘り下げることなく、西欧的価値体系に巻き込まれていった日本の在り方に失望していた。この言葉は、三島が求めた日本独自の精神的自立と文化的主体性を象徴しており、模倣ではない真の批評精神への渇望が表れている。

現代においても、この指摘は鋭く響く。たとえば、グローバル化が進む中で、自国の文化や歴史を自らの言葉で捉え、批評する力を持つことは、ますます重要になっている。三島のこの言葉は、模倣に甘んじるのではなく、自らの文化と精神に根ざした批評を育てるべきだという強い警鐘を、静かに、しかし力強く鳴らしているのである。

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