「微笑とは、決して人間を容認しないという最後のしるし、弓なりの唇が放つ見えない吹矢だ」

三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
三島由紀夫の名言(画像はイメージです)
  • 1925年1月14日~1970年11月25日
  • 日本出身
  • 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
  • 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。

原文

「微笑とは、決して人間を容認しないという最後のしるし、弓なりの唇が放つ見えない吹矢だ」

解説

この言葉は、三島由紀夫が微笑の裏に隠された人間の本質的な批評性について鋭く洞察したものである。微笑は単なる好意や親愛の表現ではなく、実は人間存在に対する最後の留保、無言の批判であり拒絶のしるしでもあるという認識が示されている。ここでは、外見上の温和さの中に潜む冷徹な批評精神と距離感が語られている。

三島は、微笑とは一見柔らかく見えて、本当のところは完全に他者を受け入れてはいない心の構えだと捉えた。唇が弓なりに曲がるその形は、見えない吹矢のように相手への批評や冷静な観察を放つのである。この言葉は、三島が持っていた表面的な人間関係の和やかさに対する懐疑と、人間の孤独と自尊を守る微細な戦いへの鋭い感受性を象徴している。

現代においても、この洞察は深い意味を持つ。たとえば、社会生活における礼儀的な笑顔や、内心の隔たりを隠すための微笑が持つ二重性は誰もが経験することである。微笑とは単なる好意の表現ではなく、時に人間関係における最後の防衛線であり、静かな拒絶の表現でもあるのだ

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る