「少年期と青年期の堺のナルシシズムは、自分のために何をでも利用する。世界の滅亡をでも利用する」

• 1925年1月14日～1970年11月25日
• 日本出身
• 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
• 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。

原文

「少年期と青年期の堺のナルシシズムは、自分のために何をでも利用する。世界の滅亡をでも利用する」

解説

この言葉は、三島由紀夫が若さに特有の自己中心性と自己陶酔の危うさを鋭く描き出したものである。少年期から青年期への過渡期に生じるナルシシズムは、世界の終焉すらも自らのドラマに取り込もうとするほど肥大化し、自己中心的であるという認識が示されている。ここでは、若き自我が世界全体を自己表現の素材にしてしまう暴力性と純粋さが語られている。

三島は、若さの持つ傲慢さを否定するのではなく、それが自己を確立しようとする過程で不可避に生まれる過剰な自意識の表れだと理解していた。世界の破滅すらも自分の物語の一部と見なすこの態度は、未成熟でありながら、同時に生の烈しいエネルギーの証でもある。この言葉は、三島が持っていた若さの光と影の両面を見つめる鋭い感受性を象徴している。

現代においても、この洞察は変わらず意義深い。たとえば、自己表現が極端に肥大化しやすい情報社会のなかで、世界の出来事すら自己アピールの材料にしてしまう若者たちの姿は、この構造を如実に示している。若さの力を侮るな、だがその力がもたらす危うさをも見据えよ。

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