「大体、時代というものは、自分のすぐ前の時代には敵意を抱き、もう一つ前の時代には親しみを抱く傾きがある」

- 1925年1月14日~1970年11月25日
- 日本出身
- 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
- 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。
原文
「大体、時代というものは、自分のすぐ前の時代には敵意を抱き、もう一つ前の時代には親しみを抱く傾きがある」
解説
この言葉は、三島由紀夫が歴史意識と時代感覚の人間的心理を鋭く捉えたものである。現代の人々は、直前の時代に対しては反発や拒絶を示すが、二つ前、つまり時間的にある程度距離が置かれた時代に対しては、懐かしさや親しみを覚える傾向があるという認識が示されている。ここでは、時代をどう受容するかという人間の本能的な距離感と、時間によって生じる評価の変化が語られている。
三島は、すぐ前の時代には新たな価値観との衝突や世代間の緊張が残るため、敵意が湧きやすいと見抜いていた。しかし、一つ時を経れば、かつての異物は歴史として消化され、郷愁や美化が生まれる。この言葉は、三島が持っていた人間の歴史認識の相対性と、時のフィルターが感情をどう変容させるかへの鋭い洞察を象徴している。
現代においても、この洞察は極めて的確である。たとえば、数十年前の文化や思想が一度は否定されながらも、時を経るごとに再評価され、愛着の対象になる現象は今なお見られる。人間の歴史認識は常に現在の立場によって歪み、敵意と親しみは時間の距離によって絶えず変化する。
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