「人間の道徳とは、実に単純な問題、行為の二者択一の問題なのです。善悪や正不正は選択後の問題にすぎません」

• 1925年1月14日～1970年11月25日
• 日本出身
• 小説家、劇作家、評論家、政治活動家

原文

「人間の道徳とは、実に単純な問題、行為の二者択一の問題なのです。善悪や正不正は選択後の問題にすぎません」

解説

この言葉は、三島由紀夫が道徳における選択の本質と善悪の相対性について鋭く指摘したものである。道徳とは、まず行為を選び取るという単純で根源的な二者択一の行為であり、善か悪か、正しいか誤りかという判断は選択の後に付随してくる副次的なものであるという認識が示されている。ここでは、道徳を絶対的な規範ではなく、生の中の行動選択という動的な過程として捉える三島の独自の視点が語られている。

三島は、善悪の観念に囚われることよりも、まず選び、行動すること自体に道徳の出発点があると考えていた。行動の直前において、人間は単純に選択を迫られる存在であり、その選択の勇気こそが人間存在の倫理的本質である。この言葉は、三島が持っていた理屈を超えた行為の決断力への賛美と、道徳の実践性に対する重視を象徴している。

現代においても、この洞察はきわめて重要である。たとえば、倫理的ジレンマや社会的な問題に直面したとき、完璧な善悪の基準を待っていては行動できないことが多い。人間にとって道徳とはまず「選ぶ」ことであり、判断はその後についてくるのだ。

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