「すぐれた芸術作品はすべて自然の一部をなし、新らしく創られた自然に他ならない」

• 1925年1月14日～1970年11月25日
• 日本出身
• 小説家、劇作家、評論家、政治活動家
• 『仮面の告白』『金閣寺』などで戦後日本文学を代表する存在となり、国内外で高い評価を得た。美と死を主題に独自の美学を追求し、最期は自衛隊駐屯地で割腹自殺を遂げた。文学と行動を一致させた生き様で今なお強い影響を与えている。

原文

「すぐれた芸術作品はすべて自然の一部をなし、新らしく創られた自然に他ならない」

解説

この言葉は、三島由紀夫が芸術と自然の関係について深い洞察を示したものである。すぐれた芸術作品とは、人為的なものではなく、自然界に存在するものと同じく、必然性と調和を持った存在であり、あたかも新たに生まれた自然の一部のようなものだという認識が示されている。ここでは、真に価値ある芸術は、人工と自然の境界を超えたところに生まれるという思想が語られている。

三島は、表現を単なる技巧や作為の結果と見ることを拒み、自然物のように、存在そのものに意味がある芸術を理想とした。つまり、すぐれた作品とは、人間が無理にこしらえたものではなく、自然界に花が咲くように、当然の帰結として生まれるべきものなのである。この言葉は、三島が持っていた芸術における必然性、美への絶対的な信仰を象徴している。

現代においても、この洞察は新鮮な意味を持つ。たとえば、表現が自己主張や人工的な操作に偏りがちな時代にあって、自然な成り立ちと存在感を持った作品こそが人の心を深く打つ。芸術とは無理な作為ではなく、自然に溶け込み、自然の一部となるような必然と美を備えていなければならない。

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