「成長する若き世代を教え導く者ほど高貴な職務が、国家にとってより価値ある仕事が、ほかにあろうか」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”What nobler employment, or more valuable to the state, than that of the man who instructs the rising generation?”
日本語訳
「成長する若き世代を教え導く者ほど高貴な職務が、国家にとってより価値ある仕事が、ほかにあろうか」
解説
この言葉は、次世代の教育こそが最も崇高であり、国家の未来にとって最も貴重な行為であるという、キケロの教育観と国家観を簡潔に表した格言である。彼は、若者を育てることは単なる個人の成長にとどまらず、国家全体の徳と知恵の基盤を築く行為であると強調しており、教育者の役割は軍人や政治家に劣らぬ国家的使命であると捉えていた。
この思想は、キケロが理想としたローマ共和政の市民観にも根ざしている。彼は、自由な国家は徳と理性を備えた市民によって成り立つと信じており、その市民を形成する最大の力が教育であると考えた。特に若者の教育は、単に知識を与えるだけでなく、倫理、判断力、公共精神を育てるものであり、それこそが国家の存続と繁栄に不可欠であるという信念があった。
現代においてもこの言葉は変わらぬ重みを持つ。教師、家庭教育者、指導者など、若い世代に価値観や知識、人格を伝える者の責任と影響力は非常に大きく、また長期的である。たとえば、一人の教師の言葉が生徒の人生を方向づけ、ひいては社会のあり方にまで影響を及ぼすという例は数多い。キケロのこの格言は、教育の本質が国家の礎であり、若者を導く行為こそが最も価値ある公共奉仕であるという、時代を超えた倫理的真理を雄弁に語っている。
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