「どんなに馬鹿げたことでも、それをすでに語った哲学者が必ずいるものだ」

マルクス・トゥッリウス・キケロの名言
マルクス・トゥッリウス・キケロの名言

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。

英文

”There is nothing so absurd that some philosopher has not already said it.”

日本語訳

「どんなに馬鹿げたことでも、それをすでに語った哲学者が必ずいるものだ」

解説

この言葉は、哲学という営みが時として極端な思弁に陥り、常識から逸脱した主張さえ真剣に唱えられてきたという、キケロの皮肉に満ちた観察を表した格言である。彼は、哲学が知を追求する崇高な営みであると同時に、過剰な理屈や非現実的な理論に走る危うさをも内包していると考えていた。つまり、どんなに突飛な考えも、誰かの「真理」として主張された前例がある、という現象に対する知的ユーモアと警句がこの言葉に込められている。

この発言は、キケロが『神々の本性について(De Natura Deorum)』や『老年について(De Senectute)』などで、エピクロス派やストア派、懐疑派などの哲学者たちの主張を紹介・批判する際に見せた懐疑的態度にも通じる。彼は、哲学の価値を認めつつも、現実から乖離した理論や空理空論には冷静な距離を保ち、常識と経験に裏打ちされた判断を重視する立場であった。

現代においてもこの格言は、あらゆる学問、思想、言論における過激な理論や突飛な主張に対する批判的思考の必要性を示唆している。特にインターネットやSNSを通じて情報が拡散される今、「どんなに奇抜でも、誰かがそれらしく語っている」という現象は日常的であり、真理と錯誤の境界が曖昧になりやすい。キケロのこの言葉は、理性と批判精神をもって知的主張に接することの重要性をユーモアを交えて教えてくれる、普遍的な知の警告である

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