「平和とは、静けさの中にある自由である」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”Peace is liberty in tranquillity.”
日本語訳
「平和とは、静けさの中にある自由である」
解説
この言葉は、平和の本質を「自由の実現された状態」として捉えるキケロの政治哲学を凝縮した格言である。彼は、単なる戦争の不在や秩序の維持を「平和」とはせず、個人の自由が脅かされることなく、穏やかに保たれている状態こそが真の平和であると考えた。ここで言う「静けさ(tranquillity)」は、外的な騒乱のなさだけでなく、内面的な安定や社会の調和も含意している。
この思想は、キケロの共和主義的価値観、すなわち法と徳に基づいた自由な市民社会の理想に通じている。彼は、自由(libertas)と秩序(ordo)は対立するものではなく、正義と理性によって両立されうると説き、強制や専制によって得られる静けさは真の平和ではないと断じた。平和とは、法が支配し、市民が自らの良識によって行動する環境の中にこそ存在するのである。
現代においても、この言葉は政治・社会に対する鋭い洞察として通用する。暴力や混乱のない社会が必ずしも自由であるとは限らず、自由が圧殺された静寂は偽りの平和にすぎない。たとえば、言論の自由が奪われ、国家に服従することで成り立つ「秩序」は、キケロの定義する平和とは真逆のものである。彼のこの格言は、平和とは単なる静けさではなく、その中に自由と尊厳が息づいていることを条件とするという、時代を超えた民主主義の本質を力強く語っている。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?