「私はこれを付け加える。教育を受けていない理性の才のほうが、天賦の才能のない教育よりもしばしば人を栄光と徳へと導いてきた」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”I add this, that rational ability without education has oftener raised man to glory and virtue, than education without natural ability.”
日本語訳
「私はこれを付け加える。教育を受けていない理性の才のほうが、天賦の才能のない教育よりもしばしば人を栄光と徳へと導いてきた」
解説
この言葉は、本来の知的能力がいかに人間の成長と成功において本質的な役割を果たすかを強調するものである。キケロは、教育は重要ではあるが、それだけでは不十分であり、人間が生まれ持った理性や判断力のほうがしばしば決定的な要素となると述べている。つまり、素質のない者に教育を施しても、それだけで偉大な人物になるわけではないという警句でもある。
この思想は、自然と教養のバランスに関する古代哲学の中心的な議論とも重なる。アリストテレスもまた「徳は習慣によって育つが、それを理解する能力は生まれつきのものによる」としており、教育は種に水を与えるようなもので、種そのものがなければ芽は出ないという考え方がここにも表れている。
現代でもこれは多くの分野に応用される。形式的な教育だけでは創造力や指導力を養うことはできず、個人の資質が大きな違いを生む。たとえば、一流の起業家や芸術家には高等教育を受けていない者も多く、彼らの成功は先天的な洞察力や独自の思考によって支えられている。キケロのこの言葉は、教育至上主義への警告として今なお示唆に富むのである。
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