「火が水に投げ込まれて冷やされ、消え去るように、潔白で最も高潔な人物に対する虚偽の告発もまた、泡立ち、すぐに消散し、天と海の脅威すらも空しく終わる――本人は微動だにせずに立ち続けている」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”As fire when thrown into water is cooled down and put out, so also a false accusation when brought against a man of the purest and holiest character, boils over and is at once dissipated, and vanishes and threats of heaven and sea, himself standing unmoved.”
日本語訳
「火が水に投げ込まれて冷やされ、消え去るように、潔白で最も高潔な人物に対する虚偽の告発もまた、泡立ち、すぐに消散し、天と海の脅威すらも空しく終わる――本人は微動だにせずに立ち続けている」
解説
この言葉は、真に徳高く潔白な人物は、いかなる中傷や虚偽の告発をもってしても動じないというキケロの信念を詩的に表現している。彼は、誠実さと高潔な人格が持つ力は、虚偽の炎を瞬時に消し去る冷水のように作用すると喩えており、徳を積んだ者の静かな威厳と不動の精神こそが、最良の防御であるという古代の道徳的信条がこの言葉の根底にある。
この考え方は、キケロ自身が幾度となく中傷や政治的攻撃を受けた経験とも重なっている。彼はしばしば弁論によって自らの潔白を証明し、公の場で徳と理性の力をもって虚偽を打ち破ってきた。この言葉には、誠実な人格がもつ自然な威光が、虚偽の攻撃を跳ね返すというストア派的な思想――すなわち、外的な動揺に対して心の平静を保つ賢者の態度――が映し出されている。
現代においてもこの格言は説得力を持つ。中傷やデマが簡単に広がる現代社会において、人格の信頼性が唯一の真の防壁となることが多い。たとえば、長年にわたり誠実な行動を積み重ねてきた人が、不当な非難を受けても多くの人に守られ、信頼を失わずに済むという例は少なくない。キケロのこの言葉は、徳を積むことの価値と、人格そのものが最も堅牢な防御であるという真理を、比喩の中に力強く語っている。
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