「真の知恵は、永遠に善であり続けないものを善とは認めず、自らの内にある幸福だけで満足できる者以外を幸福とは認めず、自分自身を支配できない者を偉大とも強大とも認めない」

- 紀元前1年頃~紀元65年
- ローマ帝国出身
- 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
- ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。
英文
“Wisdom allows nothing to be good that will not be so forever; no man to be happy but he that needs no other happiness than what he has within himself; no man to be great or powerful that is not master of himself.”
日本語訳
「真の知恵は、永遠に善であり続けないものを善とは認めず、自らの内にある幸福だけで満足できる者以外を幸福とは認めず、自分自身を支配できない者を偉大とも強大とも認めない」
解説
この言葉は、ストア派哲学の三つの核心――永続的な善、内面的な幸福、そして自己統御による偉大さ――を一つの文に凝縮している、セネカの理想的な人生観の表明である。彼にとって「知恵」とは、単なる学識ではなく、理性と徳に導かれた生き方の中で、何が真に価値あるものかを見極める力であった。
まず第一に、一時的な快楽や地位のように消えゆくものは、真の「善」ではないとされる。セネカのいう善は、理性や徳と結びついた不変の価値であり、それは時間や状況によって損なわれることのないものだけに限られる。次に、幸福とは外部のものによって与えられるものではなく、自己の内にある理性と満足の感覚によって築かれるものである。この内的自足こそが、真の自由と平静をもたらす源泉である。
最後に、真の偉大さとは支配や権力ではなく、自らの感情や欲望を理性によって制御できるかどうかにかかっている。セネカは、自分自身を制御できない者が他者を制御できるはずがないと考え、自己統御こそがあらゆる力の出発点であると説いた。この名言は、倫理的・哲学的完成を目指すストア派的理想像――善く、満ち足りて、理性的であること――を一つの真理として示す壮麗な定義である。現代においても、人間の内面の強さと自律こそが、真の幸福と尊厳を保証するという教訓は、時代を超えて響く。
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