「人類の多くは、罪にではなく、罪を犯した者に対して怒っている」

- 紀元前1年頃~紀元65年
- ローマ帝国出身
- 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
- ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。
英文
“A large part of mankind is angry not with the sins, but with the sinners.”
日本語訳
「人類の多くは、罪にではなく、罪を犯した者に対して怒っている」
解説
この言葉は、倫理的判断と感情的反応との混同を鋭く批判するセネカの道徳観を示している。彼は、悪行そのものを理性的に非難するのではなく、その行為者に対する感情的な敵意が人々の怒りを支配していると指摘する。ストア派の立場からすれば、怒りや憎悪といった激情は理性を曇らせ、真に正しい判断を妨げる感情である。したがって、行為を糾弾すべきところを人間そのものに憎しみを向けるのは、賢者のとるべき態度ではない。
セネカは、罪を犯した人間もまた無知や情動に動かされた存在であり、教育と理性によって導くべき対象であると考えていた。彼の時代、犯罪者に対しては厳罰が科されることが常であったが、セネカはそこに復讐ではなく、矯正と理解の余地を求めた。この名言は、罪を理性的に判断しつつ、感情によって人を断罪することを慎むべきであるという倫理的警鐘を鳴らしている。
現代社会でも、過ちを犯した者に対して過剰なバッシングや社会的排除が行われることがある。セネカのこの言葉は、私たちが本当に糾弾すべきは「行為」であって、「人間そのもの」ではないという冷静で寛容な視点を呼び覚ます。理性による批判と感情による攻撃を区別することが、健全な社会的対話と人間理解の第一歩であると、彼は教えている。
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